~旨味の理由~
美味「若牡蠣」とは
身が大きく、栄養価も高い
春の牡蠣「若牡蠣」。
西日本では前年の6月に種を筏に吊して育ててから、1月中~3月頃に取れる牡蠣を「一年若牡蠣(新がき)」と呼びます。
寺本水産の数ある筏の中でも、この時期に旬を迎える一番味の良い牡蠣なんです。
一年で一番甘みが強く、まろやかな味の良い牡蠣で知られています。
牡蠣の旬といえば11~12月のイメージが強いですが、ぜひ「春の牡蠣」も一度ご賞味ください。
一年、二年と牡蠣育成には膨大な手間がかかりますが、ようやっとお届けできる幸に感謝!
もう一つの若牡蠣の特徴「殻に現れる独特の縞模様」については、次の項目で詳しくお話しますね。
殻模様の秘密
若牡蠣の殻模様
変化する殻模様
エサの多い時期に、付着物を寄せ付けない勢いで一気に成長する牡蠣。
殻にも栄養が行き渡り、成長を続けています。
牡蠣の殻は、約1ヶ月で一つの層が形成されるため、木の年輪のように層を数えれば牡蠣の年齢がおおよそ分かります。
また、「層の幅=成長度合い」となるため、層の幅を見れば海の状態(栄養・水温)まで分かります。
例えば2~3月に収穫される若牡蠣(主にむき身で出荷)の殻は、非常に艶があり、かつ綺麗な縞状の模様が出る特徴があります。
2年目には殻が更に成長し、模様もこのように変わってきます。↓
夏に成長が止まり、海洋生物が付き色がぼけるのです。
ぜひ、牡蠣を召し上がる際は殻の模様にも注目してみてくださいね。
鮮度で透明感が変わる?
新鮮な牡蠣
変わり続ける色・かたち
牡蠣の色はエサの質や身入りの差で異なります。(春に近づくにつれて身入りが良くなります)
そして、牡蠣の透明感は鮮度で変わります。
新鮮な牡蠣の貝柱には透明感があるため、ここを見れば鮮度を確認できます。
その他、新鮮な牡蠣には「おなかが乳白色で盛り上がっており、光沢がある」「外とう膜(外側の黒色の部分)が盛り上がったようになっていて、縮んでいる」「牡蠣独特の磯の香りがする」といった特徴があります。
寺本水産の牡蠣は、生食用としてお届けしていますので、これらを全て満たしています。
牡蠣の生命力
ヒダを広げて呼吸しています
むき身にしても
何時間も生きる牡蠣
通常貝類はむき身にするとすぐ死んでしまいますが、牡蠣は一味違います。
心臓を傷つけないように丁寧にむき身にすれば、写真のように5時間経過していても、まだ元気にヒダを広げて呼吸しているのです!
なかなか一般の方は見ることができない場面なので、見た方は「牡蠣ってこうやって呼吸するんだ!」と驚かれるでしょうね。
また、条件が良ければ殻が無くても生き続けると言われています。
寺本水産では、生産者直売ならではの、活きの良い新鮮生牡蠣を皆様にお届けしています。
菌が少ないので、そのまま生でお召し上がりいただけます。
海水塩分濃度の重要性
海水塩分濃度が高いと菌が少ない
牡蠣は「塩分濃度」が高く、菌の少ない海で育つ方が良いとされます。
塩分が高い方が菌が少なくなることは、梅干しが10年経っても腐らない事からも分かります。
この「塩分濃度」は、川のそばや降水量が多い場合などは下がってしまいます。
川から近いと牡蠣のエサが多くなりますが、比例して菌が多くなり、同時に海水塩分濃度も下がるので、バランスを取るのが難しいところです。
梅雨など降水量が多い場合は、牡蠣を別の場所に移動するなどして臨機応変に対応する必要があります。
「広島産の牡蠣は旨い」と一括で語る場合が多いと思いますが、牡蠣がどのような海域で育つのか、それが味の決め手となります。
牡蠣を選ぶ際は、産地だけでなく海域にもぜひこだわってみて下さい。
寺本水産の牡蠣は、広島湾中央部(強流速清浄海域)の最高のあじろ(漁場)で育成します。
川から少し離れており、潮流が早く、牡蠣がたくさんの栄養を取ることができる最高の環境です。
漁場を移動する理由
抑制棚
1年の間に
3~4度移動する牡蠣たち
牡蠣は同じ場所で大きく育てるのではなく、状況に合わせて移動しています。
潮の動きが少ない小潮を見極めて、素早く行うのがプロの技術。
だいたい1年の間に3~4回は筏(いかだ)を移動させながら育成させます。
- 抑制棚で1年間、過酷な環境で牡蠣種を鍛え、成長して強くなってから筏へ移動
- 牡蠣の殻を成長させるために育成漁場に移動します
- 潮の流れが少ない漁場だと牡蠣が酸欠になるため、流れの早い漁場へ移動
- 牡蠣の身入りを良くするため、栄養豊富な奈佐美へ移動
このように、手間をかけながら大切に育てています。
台風の勢力が強い時は、牡蠣筏が波によって破壊されるのを防ぐため、風の影響が少ない漁場へ移動する場合もあります。
驚きの「牡蠣の食欲」
牡蠣の産卵で色づく海
出産に向けて
栄養を蓄え続ける牡蠣
牡蠣の身入りが良くなるのは9月ぐらいから。
水温が下がり始めると、牡蠣は「冬が来たぞ!」と、やる気スイッチが入り、一層食欲旺盛になります。
なんと、1日で300リットルを超える水を吸い込み、吐き出しながら、夏の産卵に向けて体内に「グリコーゲン」を大量に蓄え成長していきます。
この「グリコーゲン」こそが、牡蠣の美味しさの元となる栄養素です。
出産前の2~3月頃には、雪どけのミネラル豊富な水が川から海へ流れ込み、植物プランクトンが多量に発生します。
この頃に収穫される牡蠣「若牡蠣」は1年で一番甘みが強く、まろやかな味の良い牡蠣で知られています。
やがて、旨みのピークを迎えた牡蠣は、夏を迎えその栄養をすべて卵に変えていくのです。
ぜひ、季節ごとに変わる牡蠣の味を食べ比べてみてください。